東野圭吾の『手紙』は一味違う

もう何年も前に出版された本ですが、東野圭吾の『手紙』は、その世界に引きずり込まれ考えさせられる一冊でした。

東野圭吾はどちらかというと、サスペンス系が多く、どんどん場面展開していくタッチで飽きさせないという印象が強かったのですが、『手紙』はむしろ時間がゆっくり流れていく感じです。

そして、誰かに狙われているとか殺されるとか真犯人が見つかるという怖さが一切なく、「犯罪」と「その家族」のことを長いスパンで書いていくというスタイルで、本当に考えさせられる内容です。

話は強盗殺人犯とその弟の、犯罪以降の人生を書いたものですが、罪を犯した本人は獄中で苦しみ、自由の世界(外の世界)にいる弟は、様々なレッテルや差別視でまた苦しい人生を歩んでいきます。

自分の家族がもし大きな(大きくなくとも)犯罪を犯し、獄中にいたとしたらどうなんだろう、自分はそれでも家族として向き合っていけるものだろうかと真剣に考えさせられました。

特に殺人ともなると刑期が長いので、獄中にいる当人は、家族と話すことを渇望するんだと思います。

その要求に長年応え続けることができるのか…?

経験していないことなので、明確に答えは出ませんでしたが、『手紙』のストーリーの中でこの兄弟が出した答えというものは興味深かったです。

あと、毎日のように犯罪が起こり、たくさんの人が収監されていく現実社会のことを考えると、その犯罪の数だけ家族の苦しみもスタートするのだということを思い知らされました。

(被害者の家族はもちろん、加害者の家族も)