ハローサマー、グッドバイ

この小説は青春恋愛SFの大傑作です。
青春恋愛小説としても、SF小説としてもとてもよく出来ていて、甘酸っぱい気持ちになりつつもSFらしい驚きのある一冊です。
物語の根幹は、思春期にさしかかろうとしている少年ドローヴと、同い年の少女ブラウンアイズのラブストーリーなのですが、そこにSF的仕掛けとして、舞台が太陽系外のどこかの惑星、登場人物は全て異星人(ただし、外見も感情も地球人そっくり)という設定が付与されています。
設定については他にも、文明レベルは地球で言う19世紀中~後期程度、蒸気機関は発明されているが、燃料は植物から作った蒸留液、惑星には大陸が一つあり山と海によって2つの国に隔てられているなど、細かく作りこまれています。
惑星独自の生態系をもっていたり、粘流(グルーム)と呼ばれる自然現象があったり、それらが本作の異国情緒ならぬ異星情緒を引き立てていて、それも大きな魅力です。
さらに、実はもっと大掛かりな仕掛けも裏で施されていてSF的驚きを大いに与えてくれます。
しかし、このようなSF設定の数々にもかかわらず、話を読み進めていくと、不思議と普通の小説のように感じてきてしまうのが本作の凄いところです。
とにかく、甘酸っぱくてもどかしい恋模様、ひと夏の冒険、少年が大人へと変わっていくジュブナイル要素。とてもキラキラとして胸が鷲づかみされます。
そして、終盤思いもよらぬ展開からのラストでは、思わず唸るような大どんでんがえしが待っています。
本作は、甘酸っぱい青春恋愛小説、驚きに満ちたSF小説、どちらを求めている人にもお勧めしたくなる素晴らしい作品だと思いました。