植物図鑑(著者:有川浩)

25歳の女性が行き倒れの男性を拾うところから物語が始まるラブストーリーです。
普通に考えたら危ない状況ですが、その後の二人のもどかしい関係と野草を絡めたほのぼのとしたエピソードに危なっかしい出会いの状況さえ忘れかけてしまいます。
植物が好きな人はエピソードごとに登場する草花の様子まで浮かぶような描写が楽しめると思います。
拾われた男性、樹がお金を貯めるまでの同居生活ですが、主人公のさやかの荒んだ生活が樹の感性によってゆっくり穏やかになっていく様子が読んでいて心地よいです。
さやかが樹に好意を抱いてからの行動はとても冒頭で行き倒れの男性を拾った女性とは思えないほどピュアで、そのギャップが可愛く思えます。
自分の知らない樹のことを他の女性が知っているだけで苛立ってしまうなど、読んでいてくすぐったいエピソードが王道の恋愛小説です。
行き倒れていた樹には当然事情があり、物語の後半には一度別離が訪れるのですが最後にはまた二人が過ごした部屋でハッピーエンドを迎えます。
一度離れたことでさやかの気持ちの重さをすごく感じる描写がありますが、巻末のカーテンコールでそれに応えるような離れていた間の樹のエピソードがあることがとてもよいバランスに感じた1冊でした。

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